ベテランの経験こそ社会課題の解決へ。ドットラインで広がるセカンドキャリア

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発達に課題を抱える子どもの自立支援を行う「ノビルキッズ」で、児童発達支援の管理責任者を務める五嶋さん。それまでのキャリアは学校教員一筋、三十六年にわたる経験をお持ちです。ノビルキッズには、教員を定年退職してから再就職。これまでの経験を活かしてベテランらしい働き方を実現しています。

 ドットラインは従業員の平均年齢が比較的若いことが特徴ですが、経験豊富なベテランにとって、遠慮や戸惑いはないのでしょうか? ドットラインで実現する「セカンドキャリア」の実態について、五嶋さんに伺いました。

児童発達支援・放課後デイ ノビルキッズ 児童発達支援管理責任者 五嶋一郎

教員を定年退職してから再就職し、ノビルキッズの責任者へ。

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定年まで教員として勤めたことで見えてきた、児童発達支援の課題

- ドットラインに転職するまでの仕事についてお聞かせください

 大学を卒業してから六十歳になるまで、教員一本でやってきました。はじめの三年間は言語治療教室で言葉や耳に障がいを持つ子どもの指導を、その後はずっと小学校の教員として勤めてきました。

 もともと教員を目指したのは、子どもが知識を身につけていく過程に興味を持ったからです。大学三年生で特別支援学校の見学に行った時、「自分のことを自分でするのが難しい子どもがこんなにいるのか」と衝撃を受けました。私は社会科の先生を目指して勉強していたのですが、養護学校の先生になるため大学に入り直しました。

 教員になると、はじめは障がいを持つ子どもをサポートしていました。それから障害を持たない子どもが知識を身につける過程にも興味を持つようになり、小学校の先生に転身します。小学校では、はじめこそクラスを持って指導していましたが、そこでもやはり勉強についていけない子どもが気になりました。そこで教員としての最後の十年は、勉強が苦手な子どもの指導や、特別支援学級のサポートに携わりました。

- 教員を退職した後、どのような経緯でドットラインに転職したのでしょうか?

 「ノビルキッズ」はもともとI B国際教育研究所が運営していて、教員を退職した後でそちらに転職しました。後に運営元がドットラインに変わったことで今に至ります。

 転職のきっかけは、放課後等デイサービスの存在を知ったことです。支援学級の生徒の親御さんに、「この子は学校が終わった後どんなふうに過ごしているんですか?」と何気なく聞いたところ、「放課後等デイサービスがあって」と話してくれました。そんな場所もあるんだと知って興味を持ち、定年退職後に勤めることになりました。

 勉強についていけない子のサポートに長年携わってきたこともあって、定年後もその経験を活かして子どもの教育に貢献したいと思っていました。

- 実際に働き始めていかがでしたか?

 はじめは児童指導員として、発達障がいを持つ六歳から十八歳までの子どもの自立支援をしていました。勉強のサポートやレクリエーションをはじめ、一緒に料理を作ったりお出かけしたりすることもありました。

 最初は生徒の気持ちをなかなか汲み取れず、もどかしく感じることがありました。うまく自分が言いたいことを伝えられない子どもや、感情を処理するのが難しい子どもと向き合うので、苦労も多かったです。

 スタッフは少人数でコミュニケーションが取りやすかったので、環境に助けられた部分は大きかったですね。スタッフに生徒の性格や特徴を聞いたり、療育のアドバイスを求めて、一つ一つ勉強していきました。

 

現場だけでは見えない世界がある。好奇心に押されて管理責任者へキャリアアップ

- 現在は児童発達支援の管理責任者として活躍していらっしゃいます。どんな経緯で責任者になったのでしょうか?

 運営元がドットラインになって少し経った頃、自分からやってみたいと申し出ました。ドットラインでは定期的に上司と面談をする機会があります。その時に管理責任者の仕事についていろいろと話を聞いていました。聞いているうちに興味が湧き、挑戦したいと思うようになりました。

 内心、この歳からキャリアアップできるのか不安はありました。しかし、ドットラインには「やってみたい」と手をあげると、挑戦を後押ししてくれる社風があります。上司が背中を押してくれたことも心強かったです。

 私は新しい世界を知ると興味が湧き、とにかくやってみたくなる性格です。セカンドキャリアでも挑戦し続けられることはとても嬉しかったです。

- 管理責任者の仕事についてお聞かせください

 管理責任者は、「子どもたちが自立していくための計画」を考えるのが仕事です。一人一人の特性を理解し、どう接していけばいいか、個別に計画を立てています。

 仕事をする中で、生徒一人ひとりの特性を正しく把握するのはとても難しいと感じていました。そこではじめは子どもの送迎バスに同乗させてもらい、親御さんとの会話を大事にしました。ノビルキッズでの様子をお伝えしつつ、家での過ごし方を伺うことで、生徒を理解しようと努めました。障がいは似ていても性格は千差万別なので、違いを理解することを心がけました。

 また、ノビルキッズでは毎日二回ミーティングがあります。その時に「今このような計画を立てています。ご意見もらえませんか?」といろんなスタッフの意見を聞くようにしています。一人だと見方が偏ってしまう可能性があるので、多面的に理解することを意識しています。

 実は、教員時代は指導計画を考えるのが苦手でしたが、今はすべてを一人でやらなければいけないわけではありません。管理責任者ではありますが、上司やスタッフにも相談できますし、協力体制も整っています。今はとても安心して仕事ができています。

− 現場との違いや、管理責任者独自のやりがいはありますか?

 現場との一番の違いは、全体を見る視点ですね。教室の全生徒の特性を深く理解していなければ、個別に具体的な支援計画を立てることはできません。そのため、親御さんやその子が通う学校の先生とも情報を共有する機会がたくさんあります。先頭に立って長期的な方針を決めることが、管理責任者の特徴だと思います。

 計画や方針は決めて終わりではなく、うまく支援ができているかどうか「評価」とセットです。責任は大きいですが、子どもたちの成長や支援の手応えも強く実感できるので、とてもやりがいを感じられます。

 責任者としていえば、生徒の成長がその親御さんの支えにもなっていることも大きいです。ノビルキッズにはパニックや癇癪を起こしやすい子どもも通っていて、その親御さんたちはさまざまな事情を抱えていることがあります。ですから、子どもたちにできることが少しずつ増え、それが親御さんの支えになっていると思えるのはとても嬉しいです。

これまでの経験も、これからの社会課題の解決につながる。ベテランだからこそできる挑戦がある。

- ドットラインで働く人は全体的に年齢層が低いようですが、ベテランとしてやりにくい部分はなかったですか?

 それはないですね。年齢に関係なく、フラットな関係を築けていると思います。強いていうなら、子どもから遊びに誘われた時に、若い先生ほど活発に動けなくて悔しい思いをするくらいです。

 逆に、今までの経験が活きていると感じる方が多いです。学校のように授業をするわけではないですが、目の前の生徒にどう向き合うかは経験が役に立ちました。

 例えば、教室にくるなりずっと怒っている生徒がいました。私は、どう接しようか考え、その子にひたすら話しかけ続けることにしました。

 漢字練習を始めると「すごいね! 一生懸命字を書いているね」と声をかけ、算数を始めると「今度は算数もやるの? 集中力がすごいね」と褒め、隣で関わり続けました。すると初めは機嫌が悪かった生徒が、段々と楽しそうに勉強をしてくれました。

 障がいを持つ子どもは特に、自分の感情をうまく伝えることが苦手です。生徒にひたすら向き合い続け、やる気を出してもらうことは教員時代の経験が活きています。

- 最後に今後の展望を聞かせてください

 私はつい最近、新しい校舎に異動しました。まずは新校舎の児童発達支援の管理責任者として、生徒の性格や特徴を理解することに努めたいと思っています。

 それから、私自身まだまだ療育の考え方について知らないことが多いなと感じています。自分でも療育について勉強を続けていますが、まわりのスタッフや上司にも相談しながら、幅広く学んでいきたいです。

 ノビルキッズのような、発達障がいを持つ子どもを受け入れる教室は社会でも未だに少なく、スタッフも足りていないのが現状です。その中で教員時代の経験を活かし、セカンドキャリアとして社会課題の解決に挑戦できていることには、とても充実を感じています。

 ベテランとしての経験や、何事にも興味を持つ性格を活かして、これからもノビルキッズで新しい挑戦をし続けていけたら嬉しいです。

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